海運事業での取り組み

当社グループの海運部門においては、船の誕生からスクラップまで「船の一生」に関わる仕事を通して安全輸送と環境保全に取り組んでいます。
船主業においては、LNG/LPGタンカー、大型原油タンカー、石油化学製品タンカー、ケミカルタンカー、自動車専用船、大型コンテナ船、木材チップ専用船、大型ばら積み船など、ほぼすべての船種を偏りなく所有することで、船種ごとに浮き沈みのある市況変動に対しても耐性のある、バランスのとれた船隊構成を維持しています。そして、国内外の有力海運会社、石油・ガス・鉄鉱石などの資源メジャー等を中心に中長期の定期傭船契約を締結し、保有船舶の貸し渡しを行っています。船舶管理業においては、船を長期に亘り計画的に保船維持する技術や、油槽船に求められる高い安全管理基準を基礎に、運航管理における陸上からの支援と、海上の船舶とが一体となった質の高い船舶管理能力と安全重視・環境保全の姿勢が評価され、国内外の船主・船会社より船舶管理業務等も受託しています。

2018年にはフィリピン・マニラにおいて船員トレーニングセンターを設立し、未だ経済・生活格差が著しい国において数千人規模での船員の雇用・育成を図ると共に、その家族や生活を支援しながら安全意識の高い自社船員として育て、自社および管理船舶への配乗を行っております。

  • 社会への取り組み
  • 環境への取り組み

フィリピンにおける雇用と人材育成

船舶管理部門では国内外のお客様に船舶管理サービスを提供しており、東京、シンガポール、マニラ、インドに拠点を有しています。

2018年にはフィリピンにトレーニングセンターを開設し、フィリピン全土からCadets(士官候補生)を募集し、質の高い船員教育を実現するための体制を確立しました。2022年現在、約3,500人のフィリピン人船員、約2,000人のインド人船員を雇用し、保有船および管理船舶への配乗を行っています。乗船前のトレーニングや昇進するクルーを対象としたセミナー、ワークショップを通じた実践的なトレーニングや、最新鋭の操船・機関シミュレータ、ECDIS(電子海図表示システム)、発電機の実機等、本格的な研修設備を整え、主要な船員供給拠点であるフィリピンで船員研修を自営で行っています。

敷地面積は約1万7,000m2、建物延床面積は約7,000m2と大型の研修所であり、年間延べ約5,000人を受け入れることが可能となっています。また、宿泊施設も完備しており、今後の管理船舶の拡大に備えると共に、外部の船員訓練需要にも対応することが可能となっています。

いまだスラムが多く存在するフィリピンで大規模なトレーニングセンターを運営し、雇用を創出することは地域の活性化につながり、また船員の扶養家族への支援にもつながっています。

女性船員の雇用と育成

2020年よりインド人女性船員の雇用と育成を開始致しました。2022年には約10名の女性船員が当社グループの管理船舶に乗船し、男性船員とともに活躍しています。今後も継続的な女性船員の増員を計画しています。

女性船員の起用は開始してまだ間もない取り組みですが、女性船員を積極雇用し、男性船員同様の雇用機会を提供することで、今までに気付かなかった船内環境の改善や業務の効率化にも寄与する事が認められました。今後も女性船員が働きやすい職場環境の整備に取り組んで参ります。

長期航海中の健康を維持するための取り組み

長期航海に従事する船員にとって、食事は心身の健康を保つためだけでなく、海上生活における楽しみとしても重要なものですが、船上において食材を新鮮な状態で維持することは難しい課題です。冷蔵・冷凍技術は進化していますが、野菜は2週間程度で腐ってしまい、肉・魚は味が落ちてしまうという問題がありました。
当社グループの船舶管理部門では、新技術を導入した鮮度保持装置「DENBA+」(DENBA株式会社)を船舶に導入しました。この装置では独自技術によって冷蔵においては氷点下-4℃まで凍らないチルド環境を実現し、食材を新鮮な状態で長期保存できます。また、食材の細胞を壊すことなく冷凍でき、味を落とさず保存が可能です。
長期航海中に鮮度の高い食材を食べることは船員のモチベーションや健康維持への効果が期待できることから、今後も導入を広げていきます。

地域との連携

当社グループでは、海運事業の拠点のある地域においてこれまでさまざまなボランティア活動を行ってきました。
フィリピンを例に挙げると、当社グループは2008年から継続してマニラ湾の清掃活動に参加しています。
また、2011年から定期的に植樹イベントを開催し環境の保護に取り組んでいます。
さらに台風等により甚大な被害が発生した際は、寄付や支援物資の提供などを行っています。

脱炭素社会へ向けたビジョンの策定(2050年GHGネットゼロへ)

明海グループ株式会社の海運部門では、船舶の保有を行う船主営業部門と、船舶の保船・運航・船員の雇用育成を行う船舶管理部門を両輪として、国内外の海運会社、石油・ガス・鉄鉱石などの資源メジャーを中心とした顧客との間で締結する定期傭船契約を基に船舶の貸し渡しを行っています。

定期傭船契約による保有船の貸し渡しを行う当社は、グローバルな上場企業として、情報を提供する役割を担っており、自社の影響が及ぶ範囲で貸し渡し船からのGHG排出量の削減を呼びかけ、貸し渡し先による排出削減努力や削減目標を支援する立場にあります。そのためにも、関係先とも協働し、以下で紹介する環境に配慮した設備・システムの導入や環境負荷の少ない船舶の保有割合を出来るだけ高めていくことが重要と考えています。また、当社は船主業を主力とする船会社として船舶の長期的な保有を基本方針としているため、スクラップまでのサイクルが長く、環境負荷の低減に貢献しています。

環境に配慮した設備・システム等の導入

LNG船就航

2019年より174,000m3メンブレン型LNG船の保有・運航を開始しました。従来の燃料油とBOG*を利用する最新式の二元燃料低速ディーゼル機関「X-DFエンジン」を搭載しています。X-DFエンジンはボイルオフガスを燃料とすることにより従来の燃料と比べ、NOx(窒素酸化物)は最大80%、SOx(硫黄酸化物)の排出は約100%、CO2(二酸化炭素)ついては約30%の削減が見込まれています。

*BOG: 自然気化ガス

メタノールタンカーの就航

2022年より新造メタノール船2隻の保有・運航を開始しました。本船は従来の重油などの燃料油だけでなく、より環境負荷の低いメタノールも対応可能な二元燃料低速ディーゼル機関を搭載するメタノールタンカーです。
メタノールを船舶燃料として使用する場合、SOx(硫黄酸化物)排出量を従来の重油使用時と比べて約99%削減できます(2020年から始まった国際海事機関が定めた燃料油の硫黄分濃度規制0.5%以下をクリアー)。さらに、メタノール燃料は従来の燃料と比べてNOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)などの排出量が低いため、環境にやさしい燃料として期待されています。

バイオマス発電所への木質ペレット輸送

低炭素社会の実現への貢献の一環として、2020年に竣工したウルトラマックスバルカー"GREEN GENIE"は、世界各地より国内バイオマス発電所向けに、燃料用の木質ペレットを届ける長期輸送契約に従事する予定です。

人工知能(AI)解析による見張り支援システム導入

安全航海は人命と環境保護を保証できる当社の最優先事項です。当社所有の大型LNG運搬船1隻にORCA AI Systemが搭載されています。本システム最大の特徴は、赤外線カメラを含む計6つのカメラで、夜間や雨・霧等による視界不良時においても周辺の映像を映し出すことが可能です。カメラからの視覚的情報とAIS*やRADAR、GPS、ジャイロコンパス等の航海計器からの情報を集約して1つのスクリーンに映し出します。衝突の危険性を操船者に知らせる機能も有しています。これらAIが分析集約した情報が、操船者の意思決定の一助となります。

*AIS: 船舶自動識別装置

船底空気潤滑システムによる省エネ運航

明海グループ株式会社は、革新的な技術を使用して炭素排出量を削減し、IMO要件に従って増加するエネルギー効率設計指数(EEDI)フェーズIIIレベルに準拠することを推し進めています。当社2隻の大型LNG運搬船には、船底空気潤滑システム「Air Lubrication System」(ALS)が装備されており、日本の船主では先駆的な存在です。ALSは、船体の下に小さな気泡のエアカーペットを生成して、水との摩擦抵抗を減らします。これにより、船のエネルギー効率が向上し、港間で貨物を輸送する際に発生する燃料消費量とCO2が最大約6%削減、これは1日当たり最大18tのCO2削減に相当します。本船に搭載されたALSに関する情報はYoutube Link1Link2からご覧いただけます。

バイオ燃料(FAME)を混合した燃料による運航

当社保有の自動車船においてFAME(Fatty Acid Methyl Ester:脂肪酸メチルエステル)を舶用燃料に混合(混合率28%)したバイオ燃料を用いた運航を実施いたしました。バイオ燃料は二酸化炭素削減効果があり、今回の取り組みは将来における脱炭素化に向けた活動の一環となります。今後も、環境負荷低減へ向けて貢献していきます。

(出典:国土交通省の船舶におけるバイオ燃料取り扱いガイドライン)

LNG再液化装置

当社2隻のLNG船には、LNGのBOG*の最大60%を再液化可能なシステムが装備されています。このBOGは、船舶が停泊地、港、または通過する運河で待機している時に燃焼されていましたが、再液化装置によりBOGを圧縮及び液化してLNGタンクに戻すことで、環境保護のためにCO2発生を削減します。本システムにより船舶が停泊地、港、または通過する運河で待機している時の1日あたりのCO2を最大60% – 最大190t削減します。

*BOG: 自然気化ガス

低摩擦塗料の採用

次世代低摩擦塗料を採用し、より効率的な運航に取り組んでいます。これにより約5%の燃費とCO2排出量を低減しています。今後も、これらの船底防汚塗料を積極的に採用していく予定です。当社VLCC*の場合、1日当たり13tのCO2排出量削減に相当します。

*VLCC: 20万載貨重量トン以上の大型石油タンカー

SOx削減のためのスクラバー設置

条約発効に先んじる取り組みとして、明海グループ株式会社では逸早く2隻の船舶にSOx削減対応のスクラバー(排ガス浄化装置)を搭載して大気汚染物質の抑制に取り組みました。今後も環境保全の為の技術開発や導入を積極的に取り込んでいく予定です。

シップリサイクル条約(Ship Recycling Convention)への先取り

数年内には条約として発効されると言われているシップリサイクル条約*に備え、明海グループ株式会社では2009年竣工、初建造となるLPGタンカー船(VLGC)“B.W.TOKYO”において、NK Class船で初めてのインベントリ(船舶に存在する有害物質等の概算量と場所を記載した一覧表)の発行、許諾を得ました。発行に際しては、本船建造主の三菱重工業や日本海事協会では条約適合の為のチームを立ち上げ、弊社の要請に応えるべく両チームが連携し、万全の体制で行われた本邦初となる取り組みです。

*2009年5月に採択された「船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約(通称シップリサイクル条約)」

明海グループ株式会社独自の海洋汚染防止策

明海グループ株式会社の船舶管理会社エム・エム・エス(株)はOCM(オイル濃度をモニターする)の装置について、独自の方式を採用して海洋汚染防止に努めています。Oil Separatorを経由して排出される汚れを含んだ水は、通常規定で定められた数値(15ppm)を超えるものは海上への投棄が許されず、船内に留め置かなくてはなりませんが、エム・エム・エス(株)では環境に配慮して15ppmを超えるものを船内で完全焼却できる方式を取っています。